after glow
編集後記04








 本号に特別寄稿していただいたM澤A夫さんとは、『地上-GOOD EARTH-』という雑誌の編集部で先輩後輩の赤でした。当時その編集部には、蒼々たるスタッフが顔を揃えていました。編集長以下、デザイナー、カメラマン、コピーライター、アンカーマン、ライターと、今同じメンバーで雑誌を作ろうとしても、到底実現不可能と思われる豪華メンバーが、一堂に会していました。
 幸運にもその編集部へと入門できた僕は、そこでもみくちゃにされながら、雑誌作りの感覚や思考、技術、哲学----現在の自分を形作るおよそありとあらゆることを叩き込まれました。
忘れられないことがあります。
 100字程度の短い編集後記(唯一の署名原稿でした)を初めて書いて、編集長のデスクに持っていった時のことです。
彼はそれを見もせずに、くしゃっと丸めてごみ箱に捨てました。
もう一度書き直して持っていきました。ちらっと横目で見て、また捨てました。さらに書き直して持っていきました。今度は7秒くらい見て捨てました。
 書き直して捨てられ、書き直して呆れられ、書き直して罵倒され、書き直して赤を入れられ……と次第に二人の関係は進歩(?)していき、往復すること14回。ようやく原稿が通りました。
 その時、編集長は言いました。
「いいか、編集後記ってのはな、読んだ人が『バカなこと言ってんなあコイツ、こんなバカなヤツがこの本作ってんのか』と苦笑されなくちゃいけないんだ。でも何日か経って、『あれ、そう言えば誰かこんなこと言ってたなあ』と思い出してもらえる、そういうものなんだ」
 僕はびっくりしました。たかだか100字程度の原稿じゃん! そこまで考える必要あんの? でも、今になってよーくわかります。これは何も編集後記にとどまる話ではなくて、記事を書く上で、あるいは写真もデザインもそうかもしれません、メディアに携わるおよそ全ての仕事に当てはまるテーゼなのだと。声高に主張したり押しつけたりするのは、意外と簡単に、結構誰にでもできることなのです。
 では今の自分が、この『テルマ』が、そのハードルをクリアしているかというと、たぶん、いや間違いなく、できていないと思います。
 それがわかっているだけに、『テルマ』を発送する時期になると、毎月決まって胃痛と肋間神経痛を発症します。何でこんなことしてるんだろう、恥さらしているだけじゃないか、ゴミを増やしているだけじゃないか----。
 そんな時、「面白いね」と一言、言われるだけで、気絶するほど嬉しくなります。「こうした方がいいんじゃないの」と言われるだけで、さらに発奮できます。
 本誌へのご意見ご感想を、お待ちしています。心の底から。

(2003年4月1日発行「TALEMARKET vol.4」編集後記より)




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