after glow
編集後記12











 去年の今頃かもう少し前----部屋の整理をしていた時。
 古い雑誌が書棚の奥から出てきました。
 僕がまだ"スーパー駆け出しクン"だった頃、編集を担当していた雑誌でした。
 1ページの記事を作るのに、泣きそうになりながらアポを取り、死にもの狂いで取材し、1か月近くかけて書いた原稿が載っていました。
 稚拙で、堅くて、下手っぴで、思いだけがやたらと先走っていて……いま読めば、それはそれはこっ恥ずかしい「下手くそ」な記事でした。よくこんなのが活字になったもんだと、驚きすらしました。
 でも----。気がつくと僕は、時間を忘れて、その記事に没頭していました。
 面白かった。
 下手くそ極まりないのだけれど、下手くそ極まりない言葉の後ろから、書き手の思いが溢れこぼれてきて、ぐいぐい引き込まれるのでした。
 翻って、いま自分が書いている原稿や記事に思いを馳せた時……愕然としました。
 決して「下手」ではない(と思う)。商品としてそれなりに見れないこともない(と思う)。
でも----。何も残らない。リアリティもライブ感も人間像も現場の風も、伝わってこない。
 慄然としました。
 そんな時、そうしたところから、テルマが生まれました。
この本は、いつの間にか無自覚のまま、最悪の場所へと陥った自分を、もう一度捕まえ、引き戻し、叩き直す(のめす)ための手段であり、道具であり、救いであって命綱でした。
 そうして1年----。
 西暦2003年は、僕にとって様々な意味で、忘れ難い年となりました。
 こんなにも身勝手で極私的で独り善がりのものに、1年もの間お付き合い下さり、あまつさえ応援して下さった読者の皆様に、心の底から感謝と御礼を申し上げます。本当に----
本当に、ありがとうございました。
 2004年が、あなたにとってラブリーな1年でありますように----。

(2003年12月26日発行「TALEMARKET vol.12」編集後記より)




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