after glow
編集後記15











 左の写真は、プロのカメラマンが撮ったものではありません。写真が好きなアマチュアの方でもありません。
ごく普通の、それも普段はカメラなどほとんど手にしたのことのないような人が、お子さん(中央の少女)とディズニーシーに行かれた時に、何気なく撮った一枚だそうです。
 たまたまこの写真を見せてもらった時、僕はしばし、無言で見入ってしまいました。
 いい写真だ----と思いました。
 周囲の喧噪がすうっと遠ざかり、ほんの刹那、時間が止まったような。

 カメラマンと仕事をしていると、「うまい写真」には時々出くわします。というか、プロなのだから巧いのは当たり前ですが(それすらクリアできずにプロカメラマンを名乗る人は、意外と多いものです)。
 でも、「いい写真」というものには、なかなか出会えません。好みの違いもありますけど。

 この写真には、想記される物語がある。
 一人の少女と、その母と、そして彼女らを取り巻く今の環境と、ほんの少し先の未来。

 子供の虐待についてリサーチを始めて、もう10年近くになります。
 時々、「子供って素晴らしいですよね」と言う人に会います。
建前として、あるいは理屈としては、理解できる。でも、残念ながら、リアルな感覚として、僕にはそれはわかりません。きっと、最期までわからないでしょう。
 「子供達の明るい未来のために」なんてコピーを目にすると、わりと吐き気をもよおします。

 僕はこの写真の少女を、全く知りません。どんな顔をしていて、どんな性格で、何が好きで何が嫌いで、将来は何になりたくて、笑うとどんな風なのか----何も知らない。
 でも、この写真を見ていると、一人の少女の健やかな成長と、そして彼女が生きるであろうほんの少し先の世界が、今よりはもうちょっと美しいものであることを、願います。 

 人が何かを願ったり望んだりするのって、案外その程度で充分なのかもしれません。

(2004年3月16日『TALEMARKET vol.15』編集後記より)





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